IR Biotyperによる菌株の識別能を確認するために、出芽酵母のSaccharomyces cerevisiaeの7菌株について試験を実施し、さらに同一の平板培養物よりMALDI Biotyperを用いてタンパク質のマススペクトルとの比較を行いました (1菌株につき4スポット測定)。IR Biotyperにより得られたクラスター解析結果では、それぞれの菌株ごとにクラスターを形成していることから、菌株の識別ができていることがわかります (図2a)。一方で、MALDI Biotyperによる結果は、同一クラスター内に複数の菌株が混在することから、菌株の識別は難しいといえます (図2b)。
このようにIR Biotyperは、従来の菌株の識別方法に比べて迅速・簡便に行えることから、菌株の識別が必要な食品・飲料製造における品質管理に有効な技術として今後より普及していくと思われます。留意点として、IR BiotyperはFT-IRスペクトルデータの微小な相違に基づいて識別することから、同一培養条件での平板培養物を用いることが必須になります。菌種ごとに識別能が異なること、遺伝子を用いた解析手法とは異なりデータベース化できないことから、菌株の識別の判断基準となり得る比較対象株を同時に試験することが望ましいといえます。 |